2015年03月06日 プリペードカードによる生活保護費支給のモデル事業撤回を求める要望書

*標記要望書を共同で提出いたしました

要望の趣旨
大阪市は2014年12月26日,生活保護費の一部をプリペードカードで支給するモデル事業を2015年4月から実施すると発表した。しかし,本モデル事業には,以下の見地から様々な問題点があり,到底容認できるものではないため速やかに撤回することを要望する。

アルコール依存症やギャンブル依存症の特性の見地から
 
ギャンブル依存症患者およびアルコール依存症患者(以下クライエント)への支援に関しては一定の条件の下では、その必要性がある者に対し金銭管理が有効に働くことがあるのは否めない事実である。
しかし、金銭管理を必要とする見極めについては、クライエントの個別化と専門家による慎重なアセスメント(評価)を条件とする。
また、クライエントは依存対象が限定的ではなく自己責任を取らずに済む状況や環境へ依存形成し、自らの回復への努力を放棄につながることがある。さらに、依存症という疾病の性質から「金銭管理」という制約への反発や配布されたプリペードカードを売買の対象とするリスクを孕んでいる。以上から安易に
生活保護費の一部をプリペードカードで支給するモデル事業はクライエントの自立助長における弊害となる可能性がある。

生活保護費支給における自己決定の原則の問題

生活保護費支給における福祉的支援は自己決定の原則に基づいており、プリペードカードによる金銭管理はクライエントの生活そのものを管理することにつながりクライエントの自己決定を阻害するものである。
金銭管理が支援と呼べるには、その時期、管理する金額、管理方法、頻度などの綿密な検討が必要であり、その支援を開始するにあたって、クライエントの自己決定を欠かしてはならない。さらに、その支援をクライエントと共に常にモニタリングし、定期的にリアセスメント(再評価)を行うための第三者も含めた支援体制を持つべきである。リアセスメント(再評価)により、金銭管理の金額や頻度の見直しを継続することでクライエントが自立的に生計維持を行い、金銭管理の必要性がなくなった時には速やかにクライエント自身に管理責任を帰するべきである。

プリペード希望者へ勧誘拡大への問題

プリペードカードの利用については、生活保護費を計画的に消費することができないクライエントを対象とし、ケースワーカーを通じて希望者を募るとしているが、最終的には生活保護受給者全員を事業モデルの対象とすることが計画されている。誰に、どのような形で金銭管理という支援を行うかについては、専門的な支援体制に基づき決定すべきものである、しかも過重労働を強いられている行政職員(ケースワーカー)の現状においてはクライエントの専門的支援やプリペードカードの管理等を行うことは困難であることが予見される。
これらの観点から保護費の一部プリペード化がクライエントの自立への支援とは言い難く、現状のままこれが制度化されれば、むしろ、クライエントの自立を妨げる危険性を孕む制度である。


平成27年2月13日
                     
大阪精神保健福祉士協会
会長    平 則男
大阪医療ソーシャルワーカー協会
代表理事  藤田 譲
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